ここでは、準動詞の意味上の主語について説明していきます。準動詞について、詳しくは下の記事に書いていますので、まずはそちらをご参照ください。
話は相当に長くなるので、はじめに結論・全体像を載せておきましょう。
[準動詞の意味上の主語]
原則:書く
・for 人 + to〜
・所有格(目的格)+〜ing(動名詞)
・主格 +〜ing/p.p.(分詞構文)
・かかる名詞+〜ing/p.p.(現在分詞/過去分詞)
例外:書かない
・意味上の主語=一般の人々
・意味上の主語=全体の主語
以上が準動詞の意味上の主語です。と言われても、よくわからないと思うので、1つ1つ説明していきますね。
その前に準動詞の意味上の主語について、簡単に説明しておきましょう。準動詞は、動詞に準動ずるだけで動詞ではありません。名詞や形容詞や副詞なんです。でも、動詞の性質を示す以上、主語が原則、必要なんです。
そして、その意味上の主語の書き方がそれぞれの準動詞の種類によって異なります。たとえば、to不定詞だったら「for + 人」だったり、動名詞だったら「所有格」だったり、分詞構文だったら「主格」だったりと。後ほど例文を挙げて詳しく説明していきますね。
では、1つ1つ解説していきましょう。
Contents
【0】動画で解説
【1】to不定詞の意味上の主語
まずは、to不定詞からです。to不定詞の意味上の主語は「for + 人」です。
to不定詞の意味上の主語:「for + 人」
もしかしたら、to不定詞の意味上の主語が一番馴染み深いかもしれませんね。例文で確認していきましょう。
例 It is hard for him to get up at 8.
「彼が8時に起きるのは大変だ」
「to get up at 8」の意味上の主語が「for him」ですね。「for+人」の形で書かれていますね。
ちなみに学校では、「for+人」を「〜にとって」と訳すよう教わったかもしれませんが、その訳し方はおススメしません。あくまで意味上の“主語”なので、「〜が(は)」と訳すべきです。
先の例は不定詞の名詞用法の意味上の主語ですが、形容詞用法の例文も確認していきましょう。
例 I have a book for you to read.
「私はあなたが読む本を持っている」
「for you」は「to read.」の意味上の主語ですね。そして、この「for you to read」は「a book」にかかる形容詞用法ですね。この不定詞の形容詞用法の意味上の主語があるのが苦手な人が多いので、注意が必要です。
最後に不定詞の副詞用法のパターンを見ていきましょう。
例 The guard opened the door for the next guest to come in.
「警備員は次の客のために扉を開けた」
「for the next guest 」が「to come in.」の意味上の主語ですね。また、「for the next guest to come in.」は「opened」を修飾する不定詞の副詞用法です。ちなみに「目的」の意味です。この副詞用法もあまり見ることはありませんね。だけらこそ、注意が必要です。全く知らないと対応できませんからね。
※不定詞の副詞用法についてはこちらをご覧ください。
以上、to不定詞の意味上の主語「for+人」を3用法のパターンで説明していきました。いずれにせよ、「for+人」がto不定詞の意味上の主語です。
【2】動名詞の意味上の主語
動名詞の意味上の主語は所有格が原則です。所有格というのは、myとかhisとかherとかtheirのことですね。
動名詞の意味上の主語:所有格
このように動名詞の意味上の主語は、所有格が原則です。ただし、ちょっと細かい話をすると、代名詞だったら所有格で、名詞だったら目的格が好まれるという性質があります。説明だけだと、よくわからないと思いますので、例文で確認していきましょう。
例 His father is proud of his being a doctor.
「彼の父は彼が医者であることを誇りに思っている」
「being a doctor」が前置詞のofの後ろにあり、動名詞ですね。「his」が「being a doctor」の意味上の主語になっています。そして、代名詞が意味上の主語なので、所有格「his」になっています。一応、目的格「him」でも可能ではありますが、やはり所有格が好まれる傾向にあります。
ちなみに、なぜ所有格なのか?これは次の質問を考えればわかります。たとえば、次のうちどれが正しいと思いますか?
「he apple」「his apple」「him apple」
もちろん!「his apple」ですよね。このように、名詞appleの前には所有格がくるものなのです。そして、動名詞って名詞ですよね。よって、所有格が好まれるのです。
動名詞の意味上の主語が代名詞の場合は、所有格が好まれるという話をしていきました。一方、名詞の場合は目的格が好まれます。例文で確認してみましょう。
例 Tom is proud of Nancy being a doctor.
「トムはナンシーが医者であることを誇りに思う」
今回の例文では、Tom≠Nancyなので、意味上の主語をきっちりと書く必要があります。ところで、Nancyの主格・所有格・目的格は大丈夫でしょうか?
・主格:Nancy
・所有格:Nancy’s
・目的格:Nancy
目的格があまりピンと来ないかも知れませんが、たとえば、次のような英文を見れば明らかです。
Tom loves Nancy.
「トムはナンシーを愛している」
この英文はSVOなので、目的語(O)の位置にNancyが来ています。これが目的格です。なので、Nancyの目的格はNancyなのです。
少し話が逸れてしまいましたね。話を戻しましょう。動名詞の意味上の主語は「所有格」が原則ですが、名詞の場合は「目的格」が好まれるという話をしてきました。あらためて例文を載せてみましょう。
例 Tom is proud of Nancy being a doctor.
「トムはナンシーが医者であることを誇りに思う」
Nancyの目的格であるNancyが使われていますよね。
ところで、なぜ名詞の場合は目的格が好まれるのでしょうか?実は、非常に単純なのですが、所有格だとNancy’sで、長くなって煩わしいからなんです。それだけ?と思うかもしれませんが、これが真実です。
ちなみに、英語学習者にとっては所有格で書いてあったほうが、ありがたいんですよね。たとえば、次の英文をどう訳すと思いますか?
There is a story of a dolphin swimming with children.
この英文、多くの人が次のように訳してしまいがちです。
「子供たちと泳ぐイルカの話がある」
一見、正しいように思えますが、この日本語訳は間違いなんです。上記の英文だと、swimming〜の部分を形容詞用法(現在分詞)で訳していますよね。そして、ここでは詳しく話せませんが、実は次のようなルールがあるんです。
A of B において…
・Aが動詞っぽい名詞:主格・目的格のof
・Bが動詞っぽい名詞:同格のof
・AもBも動詞っぽい名詞じゃない:所有格のof
すると、上記の訳だと、Bの部分がa dolphinで動詞っぽい名詞じゃないので所有格になってしまい「イルカが持っている話」って感じになってしまうわけです。
正しくは次のように訳すのが正しいんです。
「イルカが子供たちと泳ぐ話がある」
つまり、Bの部分がswimming〜の部分であり、動詞っぽい名詞なので同格のofで訳すわけです。そして、a dolphinが意味上の主語であり、名詞なので目的格が使われているわけです。こう書かれると、英語学習者としては、現在分詞と動名詞の見分けが難しくなってしまいます。もし、これが次のように所有格で書かれていたら、わかりやすいんですよね。
There is a story of a dolphin’s swimming with children.
これだったら、すぐにswimmingの部分は動名詞だとわかるわけです。とはいえ、実際の英文では目的格で書かれるのが好まれます。
【3】分詞の意味上の主語
冒頭で示した分詞の意味上の主語は簡略化したもので、正しくは次のようになります。
・Mの場合→かかる名詞
・SVCの場合→S
・SVOCの場合→O
・with OCの場合→O
上記の通りです。
ひとつひとつ説明していきますね。
・Mの場合→かかる名詞
たとえば、次のような場合です。
例 Look at the boy playing tennis.
「テニスをしている少年を見て」
playing tennisの部分がthe boyにかかっており、形容詞用法(現在分詞)です。そして、この場合の意味上の主語は「かかる名詞」なので、the boyが意味上の主語ってことになるんです。
・SVCの場合→S
例文を挙げましょう。
例 He sat surrounded by many people.
「彼は多くの人に囲まれて座っていた」
surrounded〜の部分がCにあたり、過去分詞ですね。そして、この場合の意味上の主語は「S」なので、「He」になります。
・SVOCの場合→O
例文を挙げましょう。
例 I saw her crossing the bridge.
「私は彼女が橋を渡っているのを見た」
crossing〜の部分がCにあたり、現在分詞ですね。そして、この場合の意味上の主語は「O」なので、「her」が意味上の主語です。
・with OCの場合→O
with OCは付帯状況のwithと呼ばれているものです。
例文を挙げましょう。
例 He was sitting with his eyes closed.
「彼は目を閉じて座っていた」
closedのところが、Cで過去分詞ですね。そして、この場合の意味上の主語は「O」にあたるhis eyesです。
以上、分詞の意味上の主語を見ていきました。「意味上の主語がわかったら、なんなんだ?」と思うかもしれませんが、受験やTOEICなどの資格試験では、次のような問題が出題されるので、こういう時に必要になってきます。
[問題]
Look at the boy ( ) tennis.
⑴ playing ⑵ played
この場合に意味上の主語がthe boyなので、「少年がテニスをする」で能動関係なので、正解が⑴ playing だとわかります。
このように、意味上主語との関係で、能動か受動か考えていくので、意味上の主語がわかる必要があるんです。
【4】分詞構文の意味上の主語
分詞構文の意味上の主語は「主格」です。論より証拠ということで、例文を挙げましょう。
例 He seeing me , I ran away.
「彼が私を見て、私は逃げた」
I ranがSVであり、「SVの前は全体で副詞」というルールがあるので、“He seeing 〜”の部分はingの副詞用法、つまり分詞構文です。そして、分詞構文の意味上の主語はHeです。主格になっていますよね。
ちなみに、分詞構文の意味上の主語が主格になる理由は、分詞構文の作り方を思い出すとわかります。たとえば、上記の分詞構文の元々の文章は次のようなものです。
When he saw me ,I ran away.
これを分詞構文にすると…
①接続詞のWhenを消す
②主語が主節の主語と異なる場合はそのまま残す
③動詞の原形+〜ing にする
↓
He seeing me , I ran away.
このように、主語が主節の主語と異なる場合はそのまま残すわけなので、分詞構文の意味上の主語が「主格」になるんですよね。
以上、準動詞の意味上の主語の「原則」の部分をお話ししていきました。一度、ここまでをおさらいしましょう。
[準動詞の意味上の主語]
原則:書く
・for 人 + to〜
・所有格(目的格)+〜ing(動名詞)
・主格 +〜ing/p.p.(分詞構文)
・かかる名詞+〜ing/p.p.(現在分詞/過去分詞)[簡略版]
例外:書かない
・意味上の主語=一般の人々
・意味上の主語=全体の主語
上記の通りです。
では、次から例外の部分をお話ししていきますね。
【5】意味上の主語を書かない2つの場合
下記の2つの場合、意味上の主語を書く必要はありません。
・意味上の主語=一般の人々
・意味上の主語=全体の主語
ひとつひとつ説明していきますね。
・意味上の主語=一般の人々
例文を挙げましょう。
例 It is hard for people to get up at 4.
「朝4時に起きるのは大変だ」
このように、意味上の主語=一般の人の場合は、for peopleのように書きません。なぜならば、書かなくても明らかだからです。
・意味上の主語=全体の主語
例文を挙げましょう。
例 I studied hard for me to pass the exam.
「試験に合格するために一生懸命勉強した」
このように、意味上の主語=全体の主語なので、わざわざ書かないんです。
動名詞と分詞構文の例も挙げましょう。
例 He is proud of his being a doctor.
例 He seeing me,he ran away.
最後に、ちょっとしたクイズです。次の英文の不自然な点はどこでしょうか?
日本語:彼は髪を切るために床屋に行った
He went to a barber shop to cut his hair.
どうでしょうか?何が不自然でしょうか?
そうなんです!“to cut〜”の意味上の主語が書かれていませんよね。書かれていないということは、全体の主語“He”と一致してしまうので、「彼が床屋に行って自分でハサミを持って自分の髪を切る」という風になってしまいます。
なので、“for hairdresser to cut〜”にするか、あるいは“have his hair cut”「髪を切ってもらう」という感じで、have+OC にします。
He went to a barber shop to have his hair cut.
このように日本語と英語にはギャップがあるんです。日本語の場合は空気を読んで誰が髪を切るか?→美容師って当たり前だろって感じなので、わりかし話し手は適当に喋って、聴く側の理解力を求めます。一方で、英語の場合は、話し手がしっかりと正確に伝える必要があるんですよね。試験では、このようなギャップを突いてくることが多いので注意が必要です。
Twitterで問題を出してみたら・・・
レベル5の問題(5段階)
Would you mind ( ) the door?
ドアを閉めてもよろしいですか?— 鬼塚英介@(英語講師) (@Englishpandaa) January 15, 2022
【6】まとめ
以上、準動詞の意味上の主語について話していきました。学校では、「準動詞」という概念で見ずに、それぞれ不定詞・動名詞・分詞・分詞構文と別々に教えてしまいますので、この意味上の主語のところが整理されていない人が多いんですよね。でも、このようにして準動詞という概念を使えば、一つに整理することができるんです。
[準動詞の意味上の主語]
原則:書く
・for 人 + to〜
・所有格(目的格)+〜ing(動名詞)
・主格 +〜ing/p.p.(分詞構文)
・かかる名詞+〜ing/p.p.(現在分詞/過去分詞)[簡略版]
例外:書かない
・意味上の主語=一般の人々
・意味上の主語=全体の主語
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